ATHLETE INTERVIEW

大器晩成を信じて向き合う

プロフィール
一色 勇輝選手
柔道 100kg超級
JRA 日本中央競馬会 所属

広島県出身
10歳の時親戚の勧めで柔道を始める。
高校で全日本ジュニアに出場して大学は日大へ進む。日大では凡事徹底・部屋の掃除や生活を整えることをが習慣となった。当時、日常生活を整えることと競技のつながりについては理解できていなかったが、社会人になって生活や練習状況を自分でコントロールできる権限を持った時、その意味に気づいた。

戦歴

2022年 講道館杯5位
2022、2023年 全日本選手権5位
2023年 全日本選抜体重別3位
JRAの選手となって現在7年。社会人で大きな戦績を残せていないもどかしさを抱え、度重なる怪我と向きあい続けた心境を語ってもらった。

一色 勇輝選手 イメージ01

自分を表現するための柔道。
だから勝つことにこだわる姿勢を持ち続けたい。

真木:なんかいきなりなんだけど、一色くんはすごく「ストイック」だよね。
一色:そうですかね。。自分は、才能で他の人達を超えていける人間じゃないってことは、とくに社会人になってからすごく感じたので、頭を使って、とことん自分と向き合って、愚直に練習していくしか勝ち方が見えてこない、とは思っています。
真木:なるほど。確かに、トップに居る人達は才能がありながら努力している人たちだもんね。厳しい世界だね。
一色:ほんとにそれです。体がデカくて、力があって勝てたのは高校ぐらいまでで、大学、社会人になるにつれ、自分の体力とか身体能力だけで勝ち抜いていけるほど甘くないことを痛感しました。
真木:まさに「壁」だね。どんなふうにその壁に立ち向かおうとしているの?
一色:自分は日大出身なんですが、日大では基礎体力つけて、地力を上げて勢いで勝つ!っていう柔道だったんですけど、東海(全日本学生優勝21度の名門)出身の選手なんかは、すごく考えている選手が多い。頭を使って柔道している。自分には日大のスタイルが合っていたと思うんですけど、社会人になってやはり自分の長所や短所をよく知って、取り組むべきことを見定めて進んでいく必要があることを痛感してます。
真木:じゃあ今は考えながら柔道してるんだ。
一色:自分なりには、はい。笑
真木:トレーニングやリハビリに来る時、いつも哲学的な質問してくるよね。
一色:哲学的かどうかはわからないですけど、自分のやってること、自分の場合は柔道なんですけど、それにどういう意味があるのかとか、どんな歴史があるのかとか、これから先の柔道界に必要なこと、とかは興味ありますね。
真木:なんでなんだろ。
一色:うーん、、自分は怪我が多くて、一生懸命練習しているつもりではあるんですけど、どうして怪我してしまうのか、って考えると、その「意味」ってなんだろうって思うんです。怪我したり、負けたりすることの中にも絶対意味があって、そういうこと考えてると、なんで柔道やってるんだっけ、とか、これからどうしていきたいのか、とかどうしても考えちゃうんですよね。。
真木:いや、考えていいんじゃない?大人なんだから。笑
一色:そうすかね。確かに。笑
一色 勇輝選手 イメージ02
真木:なんで柔道やってるんだ、って、要は柔道をする目的、柔道を通してどんな生き様を描いていくかって話なんだと思うんだけど、一色くんはどんなふうに考えているの?
一色:将来のことまではまだ見えないですけど、自分は、承認欲求を満たしたくて柔道しているようなところがありました。人に認められたい、試合に勝つことでそれを満たしてきたなと。負けるとそれこそ自分を否定されてしまう感じがするので、勝つことで自分のやってきたことを肯定したい、みたいな。それはそれで絶対必要なことだと思ってます。でも、思うように勝てなくなったり、怪我が続いたりするとどうしてもメンタルがブレると言うか、やられる感じありますよね。自分を否定してしまうというか。そういう難しいところでも、その事自体から逃げず、向き合うことって大切なんだな、、と学んでいるように思います。
真木:向き合い続けることが大切だなって思った出来事ってあった?
一色:社会人3年目、手首の手術をしたあとの全日本選手権の予選ですかね。それこそまだ社会人で結果が残せていない中で、手術をして、この大会を目標に自分自身と対話しながらトレーニングと練 習を積み重ねていきました。その中で、向き合っている方向は「これでいいのか?」って暗闇の中を模索している感じがあったんですが、なんとかくらいついて本戦出場を決めた時、「間違ってなかった」って思えたと同時に、きちんと逃げずに向き合えばみえてくるものがあるんだ、と思えました。
真木:競技を通して、自分と向き合うことが大切だと思えた瞬間だったんだね。
一色:そうだと思います。
真木:気持ちの強さみたいなのは、実際の試合の場面でもみてとれるよね。
一色:そうですか?
真木:つねに前に出ることを意識していると言うか、「引かない」。うまく受けることはしているけど、気持ちの面で引かない感じっていうのかな。すごく感じます。
一色:それは意識していることなので、そう言ってもらえると嬉しいです。
真木:あと、話しているときの印象とは違って、意外と器用。笑
一色:不器用そうですか?笑
真木:っていうか、愚直だよね。愚直な子って、プレーも愚直なスタイルのこと多いけど、一色くんは足技や組手の崩しなんかも器用で、それは自分の柔道と向き合うなかで錬成されてきたものなのかな、って感じました。
一色:ありがとうございます。
真木:Re-Viveにはどうして来ることになったんだっけ?
一色:右肩の痛みがどうにも治らなくて、どっか良いとこないか、って探しててHPみてすぐ電話しました。
真木:そうだった!HPみて電話してくる人少ないんで、印象的。笑 しかも、普段電話は留守電に任せているのに、そのときは出なきゃいけない気がして出たんだよね。そしたら、なんか困ってそうな感じの無骨な男だった。
一色:そんな印象ですか!笑 でも探し求めてひらめきだったんで、つながってよかったです。
真木:その後肩の状態はどうですか?
一色:やり込むとまだ肩の重さとか動きが悪くなってくることはありますが、思い切り柔道できるようにはなりました。その分、膝に負担がかかってて、今、膝の状態を改善するために日々取り組んでいます。
真木:どこまでいっても向き合う感じだね。笑
一色:はい。それが自分の強みだと思っていますので。笑
真木:中堅からベテランと言われる領域に入っていると思いますが、今後の柔道人生をどのように思い描いてますか?
一色:自分はまだ社会人になって思うような成績を残せていません。だけど、心の中はまだまだ熱いものがあります。Re-Viveでも自分の体を良くすることに取り組んで、日々の練習をしっかり追い込 んで、まずは日本一になります。自分は「大器晩成」だと信じてるので!
真木:なんというか、一色くんの柔道は「魅せる柔道」だなぁ、って気がします。できたら色んな人 に観てほしいと思うから、まずは畳に上がる準備をしっかりしていきましょう。
一色:はい。一歩一歩やっていきます。
真木:本日はありがとうございました。
このインタビューは2025年2月に行われたものです
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